信じぬける友


               本当に一人の信じぬける友をもつ人は、人間を信じられる

     

             もう、何十年前でしょうか、まだ今のように、

             イジメということも大きな問題にはされていなかった頃ですが、

             東京のある中学校で、一人の学生がイジメによって死にました。

             学校で首を吊って亡くなったんですけれども、その子が死ぬ前に、

             まあ、教室にはなんでも思ったことを書いていいノートが置いてある、

             そのノートにですね、「たった一人でいい、たった一人でいいから、

             本当の友達が欲しかった」と、「では、さようなら」という、

             そういう文章を残して亡くなっているんですね。

             そこに、「たった一人でもいい、一人でいいから、本当の友達が

             欲しかった」と、その子供の悲痛な言葉でございますね。

             一人の、本当に一人の信頼できる、信じぬける、


             そういう友をもつ人は、人間というものを信じられるんでしょう。




            ──────  宮城 豈頁 (みやぎ・しずか) 『二河譬』より