高明寺レポート
いじめに苦しむ君たちへ
いじめに苦しむ君たちへ
大河内清輝くんのお父さんの手紙
清輝と同じように人に言えない苦しみをもっている子供たちへ
清輝のお父さんより
今、私は清輝がなぜあんなに苦しみ悩み、つらくてしかたがないのに、一人で心の中に閉じ込めてしまったのかをずっと考えています。
今、清輝の悲しい出来事で、学校の生徒をはじめいろんな所でいろんな事をしようとしています。しかしこれは君たちのつらさを本当にわかっているのだろうか、助けてやれるのだろうかと悩んでいます。それは君たちの本当の気持ちをわかってやっているのだろうかとの疑問からです。
清輝が何を思っていたのか……
僕にも弱いところがあった。だからそれを言うのは恥ずかしい。お父さんお母さんに言っても本当に助けて、守ってくれるだろうか。言ったらクラスの子や先生はどう思うだろうか……。
そんな事をいろいろと私は考えています。
今、私はできれば清輝についていきたい。
清輝もやっと背が大きくなってきたなあ、これならお父さんをすぐ追いこしてくれるなあ……
この彼がいなくなった悲しみは、君たちならわかってくれるとおもいます。
今、清輝のことが国中で話題にされ、大きな事をしたと慰めてくれる人もいますが、私は彼が何もしないでも、何もできなくても、ここに一緒にいてくれる方がよっぽどうれしい。まだいろんな事をしたい。おばあちゃん長生きしてください。おじいちゃんありがとうといいのこすなら、なぜ、こんなことをしたのか。誰も心の中では良い事をしたとは思っていないよと、叱ってやりたい。
このくやしい、悲しい気持ちをわかってもらえるだろうか。君たちがぼくも清輝君のようになにかをのこして皆にわかってもらおうと思ったら、それはとんでもない間違いです。つらさにじっと耐えている君たちならわかってくれると思いますが、同じ苦しみ、いやもっと大きいつらさをお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟、友達に残すことになるんです。君たちはもっと大きくなれるんです。
この苦しみをなんとか乗り越えて欲しいという願いで一杯です。今こうして書いている間も清輝の本当の気持ちが、わかってやれるだろうかと思っています。
おじさんのこの苦しさを少しでも助けてやろうという気持ちがあれば手紙で今の気持ちを、なぜ人に言えないのかを教えてください。
大河内 祥晴
*資料 毎日新聞 1994年12月16日